だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

ウルトラセブン第47話「あなたはだぁれ?」に見る団地生活

 

団地という言葉は、いずれは死語になるのだろう。

現在、団地のほとんどが老朽化し、住む人も老人が多くなり、かつての賑やかさは遠い昔の物語である。私が子供の頃も近所に団地があり、日が沈むまで、子供の声が絶えなかった。そこのジャングルジムで遊ぶために、団地組の少年たちと日夜戦ったものである。

今では、その団地も洒落たマンションに建て替えられ、団地の持つ、近未来的でありながら、古き良き昭和の香りがする空間ではなくなった。そんなセピア色の風景は、もう古い写真やドラマの中にしか存在しないのだ。

私がウルトラQウルトラセブンをよく観るのは、そうしたセピア色の風景を見るためでもある。

さて、ウルトラセブンは、傑作が多い。いい歳をした大人たちが本気で作っていたからだろう。子供向きの番組だったが、子供だましの要素はまったくなかった。「ノンマルトの使者」や「第四惑星の悪夢」といった傑作もいいのだが、私が一番好きなのは「あなたはだぁれ?」という作品である。

「あなたはだぁれ?」は、団地が主役と言ってもいい。

ある深夜、酔っ払って我が家のある団地に帰ってきたサラリーマンの佐藤が、奥さんや子供、近所の人、交番の警官から「あなたは誰?」と言われる。「何を言ってるんですか。5-1に住んでる佐藤ですよ」と懸命に訴え、妻と並んだ自分の写真を警官に見せる佐藤。「ほら、これが僕ですよ。これが女房」

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「よく見てごらん。本当にこの人、奥さんなの? 他人の空似って言うこともあるからね」

写真の妻と目の前の女性を見比べる佐藤。

「似てるけど……違うようでもあるし……」

「だろ。そう思うっていうことは違うっていうことだよ」

警官に簡単に説得されて、彼はその場を離れるのだが、途中、物陰から自分を見つめる怪しい影を見つける。目が赤く光っていて、どう見ても人間ではない。その時、上空を一機のジェット機が過る。ウルトラ警備隊のウルトラホーク1号だ。怪電波の情報を受けて偵察していたのだ。

「そうだ。ウルトラ警備隊に連絡しよう」

彼は電話中に宇宙人に襲われてしまい行方不明となるのだが、異変を察知したウルトラ警備隊が出動。ダンとフルハシ隊員が捜査を開始する。途中で切られた電話を再生して聞かせる場面では、ちょっとしたギャグが入った。

「パパの声だわ」

「オタクの旦那様よ。いい声ねぇ」

ちょっと太り気味の主婦が、行方不明の夫を心配する妻に脳天気な声をかけてしまい、警官に「奥さん!」とたしなめられる。「すみません」

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あまり書き込んでも長くなるので早めにネタバレすると、実は、佐藤に「あなたは誰?」と言った人々は、夜しか活動しないフック星人が化けていたのである。深夜、団地そのものを地下に移動し、そっくりの団地を地上に出して、地球侵略に向けて夜な夜な準備を整えていたのだ。

そんな面倒なことをしなくても、と誰もが思うだろう。だが、相手はフック星人である。人間の思考とは異なるのだ。また、細かいところを突っ込むのは無粋というものである。団地をまるごと地下に移してしまうというアイデアに感心すべきだ。

ラストも団地ならではのオチが付いていた。

ウルトラ警備隊とセブンの活躍で事件は解決。佐藤は、ウルトラ警備隊ポインターで送られ我が家に帰ってきた。隊員たちが見守る中、階段を駆け上る佐藤。表札を確かめドアをノックすると、現れたのは妻とは別人だ。

「あら、お隣の佐藤さん」

間違えて隣の階段を登っていたのである。

ウルトラセブンの傑作のひとつ「第四惑星の悪夢」でも団地が登場するのだが、どちらも横浜市にある「たまプラーザ」という団地らしい。横浜には何度も行ったのだが、ここは未見である。いつかは行ってみたいものだ。

ちなみにラストシーンでウルトラ警備隊のそばに子供がいるのだが、子役ではなく近所の子供なのではないか。「なにやっとんや、このおっちゃんら」という声が聞こえてきそうである。ま、古き良き時代のテレビドラマだ。

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