だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

私の愛読書が、村上春樹からカズオ・イシグロに変更されました。

f:id:b9q:20171006084837j:plain

本当は、筒井康隆が好きである。

だが、かつて筒井康隆はウンコを食う小説を書き、最近では「慰安婦像にザーメンをぶっかけよう」などとTwitterに書いてヒンシュクを買った人だ。なかなか人前では「愛読書は筒井康隆です」とは言えないのだ。

顔が不細工なのにええカッコしいで、つい外聞を気にしてしまう。私の悪い癖だ。

うん、やっぱり愛読書は筒井康隆と言うのはやめておこう。ということで、「愛読書ですか? 村上春樹は好きですね。あとは……そうですね……ガルシア・マルケスなんかも読んでますよ」などと言うことにしている。

ガルシア・マルケスの名前を、気分に応じてヘミングウェイにしたり、ブラッドベリにしたりする訳なのだが、村上春樹は不動だった。なんとなくオシャレだし、実際にデビュー作の「風の歌を聴け」はリアルタイムで読んでいる。

これが伊坂幸太郎になるとちょっとパカっぽい。まあ、作品的には素晴らしいのだが、作りすぎているというか、饒舌すぎるというか、「愛読書」というには照れが出る。東野圭吾も同様で、なによりあの人は多作すぎだ。

愛読書には、村上春樹がちょうどいいのである。知的でオシャレ。知名度も高く、少々左寄りのイメージがあるが、ネトウヨになった村上春樹よりはマシである。

さて、カズオ・イシグロノーベル文学賞を受賞した。

私は、「わたしを離さないで」は持っていて、ただ、読みはじめると「わたし」という一人称で「ですます」調。読みやすそうなんだが、なんとなく文学の香りが薄いような気がして読まずに置いていた。「ですます」調に偏見があるのかもしれない。

だが、あなた。

ノーベル文学賞である。

私のもう一つの悪い癖は、権威にへつらうことである。ノーベル文学賞を受賞した以上、私は全面的に受け入れるのである。「ですます」調、万歳!

さらに、日系の英国人というのがポイントが高い。「日本人でノーベル文学賞!」ならミーハーなイメージがあるが、日系である。セーフ!なのだ。

しかも、脳天気なアメリカ人でも色情狂のフランス人でもなく、英国人。陰鬱で狷介。街にはいつも霧がたちこめ、飯がまずく、没落したた貴族や殺しの許可書を持ったシリアルキラーが街をうろついている。

これはもう、村上春樹が太刀打ちできる相手ではないのだ。

というわけで、私の愛読書はカズオ・イシグロに変更されたのである。愛読書である以上、これから「わたしを離さないで」を読まなければならないのだ。やれやれ。

 

b9q.hatenablog.com