だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

役者さんがかわいそうだ、と思わず泣いたTBS新春スペシャルドラマ「都庁爆破」

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私はね、映画やドラマを見て「クソだウンコだ鼻クソだ」などとボロカスには言わない男である。一本の作品にどれだけ多くの人が関わり、時間と労力を経て出来上がっているか知っているからだ。そう簡単には批判できないのである。

だがね、それも程度による。

いやあ、「都庁爆破」はひどかった。

はっきり言おう。クソであると。もちろん役者はいい人が揃っていた。だが、セリフの一つひとつが薄っぺらなのだ。紋切型。大げさ。嘘くさいという難点に加えて、どうも人物設定が明確でないのか、突拍子もないセリフが乱出した。

そもそも喋り過ぎである。

都庁内にテロリストが侵入しているというのに、やたら喋る。しかも、普通の声の大きさである。テロリストに気付かれてしまうではないか、と画面のあちら側に向かって「Be quiet!」などと叫んでみても、彼らは平気で喋り続ける。案の定、階段の上から銃撃されてしまうのだ。

たぶん、主役の長谷川博己さんと吉川晃司さん、演技しながら、「うーん、こんなんでええんやろか?」と疑問に感じていたはずである。

銃を突きつけられて今にも殺されそうな女の子が、突然「真っ赤なお鼻のトナカイさんが♫」と歌い出すのは、まあいいとしよう。「ちゃんと伏線ありまっしゃろ。見せ場でっせ!」という制作側のドヤ顔が見えてきて腹が立つのだが、仕方がない。

歌の選択にも不満があり、そもそもいくら鼻が赤くてもそれ自体は光らないわけで、暗い夜道を照らすわけなどないのだ。鼻が夜道を照らすならば、ハゲ頭はもっと照らすのであって(以下略)。

一番ダメだったのは、屋上の人質救出シークエンスがなかったことだ。これは、一番の見せ場になったはずである。

屋上に人質が集められるという「ダイハード」と同じ設定。テロリストたちは、人質たちと共にヘリコプターに乗り込み、どこかに突っ込んで自爆するつもりだ。テロリストは死ぬことを賛美しており、下手に救出しようとすれば、人質が射殺されるのは明白である。

さあ、どうする!?

当然、長谷川博己さんが爆弾の解除、吉川晃司さんが屋上に向かって人質の救出にあたると思いきや、吉川晃司さん、いつまでたっても屋上に向かわない。爆弾を解除した長谷川博己と談笑し、もう、事件解決状態である。

いやいやいや、屋上に人質が……などと気をもんでいると、テロリストに捕まっていたはずの長谷川博己さんの奥さんが娘の名前を呼びながら現れるのだ。

その前に自衛隊が突入していたから、彼らが救出したという設定なのだろう。だが、まったくそのシーンを入れないというのは、手落ちどころの話ではない。無能低能ケツの穴からひねり出された固形物のポンポコピーと言われても仕方がないのだ。

さらには、都庁爆破のシーンでビートルズの「イマジン」を流すセンスのなさ。もちろん非情なシーンに美しい音楽を流すという手法は存在する。だが、まるで合っていない。このシーンだけでなく、音楽の使い方が非常に古臭かった。

まあ、都知事の名前が小池都知事をもじった大池都知事で、見た目もそっくりにしていた時点で、「ああ、こりゃダメだ」と判明していたのだが……。やたら都知事が毅然とした正義の味方風(ただし安っぽい)だったのは、撮影当時、マスメディアが小池都知事推しだったからだろう。

日本死ね」のユーキャンがスポンサーに入っていたことを考えれば、都知事を似せるだけではなく、本当は、安倍総理をもじって高倍総理にでもして、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」などと言わせたかったに違いない。さすがにそんなセリフはなかったが、「これでもか!」と言うほど総理は悪人として描かれていた。

アベ政治を許さない!」という魂胆がミエミエだ。底の浅い制作陣である。

そして、結末は、女の子の「お腹すいた」いう素っ頓狂なセリフに、「やあ、ごめんごめん。これから食べに行こう」とパパが答え、家族三人が仲良く事件現場を去っていくのだ。

ちょっと待てやぁぁ! 人質やったんやから、事情聴取とかあるでしょうがぁぁ。そもそも長谷川博己さんは相手がテロリストとは言え、無職の立場で何人も殺してるでしょうがぁぁと怒鳴ってみても詮無いことである。リアルさだけを求めるつもりはないが、ある程度は、現実的にしてくれないと、一気に醒めてしまうのだ。

例えば、「シン・ゴジラ」の政府対応のリアルさである。「都庁爆破」の政府対応は、あまりに嘘くさくてついていけなかった。

唯一、私が評価したのは、主人公と絡みのあった消防士がテロリストに殺されるという点で、「おお、この男を殺すか!? それでこそテロリストの非情さが伝わるというものだ。よく、殺した!」と拍手した。

だが、途中から「しかし、このレベルのオハナシを作る連中が、そんな選択をするだろうか」と疑問に感じはじめ、そしたらあなた、やっぱり生きてましたよ。ガチョーンである。あのとき感じた少しばかりの感動を返せ!と言いたい。

ちなみに劇中でやたら「クリスマス」が強調されて、いやいやいや今は新年だろと突っ込んでいたのだが、どうやら去年選挙特番があったせいでずれたんだそうだ。その点だけは、お気の毒である。

キレッキレの動きだった吉川晃司さんや、相変わらず魅力のある長谷川博己さんをはじめ、役者の方々は素晴らしかった。だが、それ以外はひどかった。監督と脚本、演出の皆さんには、市中引き回しの上打ち首獄門を申し付ける。