だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

「はれのひ」が涙雨になった日。晴れ着を着れなかった、あるいは着なかったあなたへ。

f:id:b9q:20180109124549j:plain

成人式とは、成人になった覚悟を迫る式であって、祝うためのものではない。従って晴れ着や羽織袴など言語道断。戦闘服で行かんかいっ、などと私は考えているのだが、そんな偏屈な人間は大人には少数なので、これから成人になる方々は心配しなくていい。

おそらくこれからもずっと成人式は祝う日であり続けるだろう。

さて、成人の日のニュースで注目したのは、やはり「はれのひ」という貸衣装屋の当日バックレ詐欺事件である。「はれのひ」は、横浜市などに店舗を置き、着物の着付けやレンタル、販売を手がける業者なのだそうだ。

成人の日の当日、契約した新成人らが「いよいよ今日は成人式」と行ってみたところ店が閉まっていた。あわてて電話をしてみるもつながらない。他の業者の協力で着付けできた人もいたが、それは一部の人だろう。一人あたり数十万円を支払っていたといい、被害者数は300人ほどと思われる。

成人の日だからとなぜ晴れ着を着るのか、と普段ブツブツ言っている私でも、この事件はさすがに被害者が可哀想に思える。店舗に行って、そこが空っぽであった時のショックは何となくだが想像できる。

頭の中が真っ白になるという陳腐な表現があるが、まさにその通りなのではないか。

一人の女性が「成人式には出ません」と健気に語っていた。彼女だけではなく、彼女の晴れ姿を楽しみにしていた親や祖父母がいるはずで、そのことを考えると胸が詰まった。

私は思わず、自分かドラえもんだったら何とかしてやれるのにっ、と本気で悔しがった。私が魔法使いサリーなら一瞬で解決できるのにと残念がり、さらには私が福山雅治なら「残念だったね。でも、これからぼくと二人だけの成人式をやろうじゃないか」と言ってやれたのにと妄想が発展したのである。

まあ、私の妄想などどうでもいい。

これだけのニュースになった以上、警察は動くだろうし、捜査にもかなりの力を入れるのではないか。これを取り逃したら神奈川県警の汚点がまた一つ増えてしまうのである。行方がわからない社長も、おそらくすぐに見つかるだろう。

今頃は、「こんなはずではなかった」と怯えているのではないか。

はれのひ福岡店」だけは業務を行っていて、店舗責任者の女性は「社長とは今年に入って連絡が取れていないが、新成人の予約が入っており、スタッフと話し合って対応しようということになった。お嬢さんたちを泣かせるわけにはいかないと思った」と語っている。できれば、他店との連携もしてほしかったが、まあ、横浜と福岡ではちょっと無理か。もしかすると地理的なこともあって、社長の影響力が薄かったのかもしれない。

ちなみに「はれのひ」の社長は、篠崎陽一郎という人で、一部の信頼できない情報ではすでに上海に逃亡したとのこと。Facebookを8日夜10時過ぎに更新し、それに上海の位置情報画像があったらしい。Facebookはその後削除された。ただ、わざわざ位置情報を含めた更新をする意味が不明で、これは捜査を撹乱する目的でわざと晒したとも考えられる。また、この情報のすべてがフェイクである可能性もある。

会社のサイトもすでに削除されていて、なかなか手際がいい人のようだ。にっちもさっちもいかなくなってやむなくバックレたというよりも、開き直って「もう、こうなったら、倒産前に稼げるだけ稼いだるわい。後は野となれ山となれじゃ」という心境だったのだろう。

成人の日を迎えた皆さん。一部とは言え、こういう卑怯な振る舞いを平気でできる人間が存在するのが、世間というものなのだ。

ようこそ、大人の世界へ。