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今年も、「一太郎」の季節がやってきた。

バージョンアップのお知らせが届いたのである。毎年毎年、この時期になるとカタログが送られてくる。

一太郎と言っても、ほとんどの方は知らないだろうが、ジャストシステムという会社が出しているWindowsパソコン用のワープロソフトだ。日本語変換のATOKの方が有名かもしれない。

私はパソコン黎明期からパソコンをいじっている初期型のオタクなのだが、そういう人間からすると、実に付き合いが長い会社である。もう、30年ほどになる。最近のジャストシステムは、マイクロソフト帝国のWordに蹴散らされて、ワープロソフトのシェア的には、もう虫の息だ。

日本語を書く上では、Wordの百倍はいいのだが、まあ、いいものが売れるとは限らない。パソコンの世界では、例えばWindowsOSなどという厚化粧の婆さんが、すっぴんで美しいMacOSよりもシェアが高いわけで、時々、そういう不条理が起こる。

さて、一太郎は長い間ワープロのスタンダードであり続け、特に役所や学校などではシェアが高かった。細かいところに手が届く機能や仕様により、入力から印刷まで非常に快適に行うことができたのである。

ああそれなのに。

農林水産省一太郎からWordへの切り替えをはじめることとなった。

「Wordに統一することで効率化でき、働き方改革につながる」と言っているらしいのだが、いやいやいや、それはない。いくらなんでも盛り過ぎである。AIが搭載されたワープロでもあるまいに。

「これまで一太郎の方が使用頻度が高かったが、省外で文書を確認しづらく残業が増えがちだった」と農林水産省の幹部は言う。「若手からWordに統一してほしいという強い要望があった。また、取引のある民間企業の中には、一太郎の文書の閲覧・編集のためだけに使用契約をしているケースもある。Wordに統一することで企業側の負担も軽減するのではないか」

役所の文書なら一太郎の方が効率的であることは間違いないのだが、「何、これ? こんなの使えねえよ」と若い人たちがブツブツ言ったのだろう。私のようなワープロ&エディターフェチからすると、「もっと好奇心を持っていじってみろよ」と思うのだが、普通の人には単なる仕事の道具に過ぎないのだ。まあ、仕方がないね。

一太郎は、痒いところに手が届くというか、届きすぎて痒くないところまでかいてしまうというのが特徴で、もうちょっとシンプルで汎用性を重視した設計でも良かったように思う。

ただ、例えば括弧の入力などは非常に快適なのだ。( を入力すると、自動的に) が入力され、カーソルが「」の間に移動する。後は、そのままセリフを入力すればいいだけだ。また、a) と行頭に打って改行すると、次の行頭に b) が自動的に入力されるようにもできる。細かなことだが、効率は上がるのである。

また、文書作成だけではなく、書類のレイアウト、目次や索引の作成から、折りの入った製本用の印刷まで、一太郎ならWordよりも簡単に美しくできる。資料や企画書作りの効率アップになると思うのだが……。

従って、農林水産省の「一太郎のせいで残業が増える」という発言には、納得がいかない。正確には「みんな一太郎に慣れていないし、今さら新しいアプリを使いこなすのは面倒なのでWordにします」というのが正しいのではないか。

などと一太郎をかばいながら、私自身一太郎から遠ざかり、Scrivener(スクリブナー)だMeryATOMだと、別のソフトに目移りしている状態である。最近、一太郎を起動したのはいつだったか? もはや記憶にないのである。

私は、駄文しか書かないのだが、それでも売文業者であり、考えてみれば随分と一太郎で稼がせてもらった。字がヘタで漢字を知らない私が、ここまで来れたのは一太郎のおかげと言っても過言ではない。

久しぶりに一太郎をバージョンアップしてみるか、と思う。