だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

今世紀最大の発明は、温水洗浄便座+暖房便座に決定しました。

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今日、便座に座って驚いた。

非常に冷たかったのだ。心臓が止まりそうなほど冷たかった。止まっていれば、尻を出したまま死亡と言うことで、実に格好が悪い。葬式でのひそひそ話やプッと吹き出す連中を思い浮かべると段々腹が立ってきた。絶対に避けたい死に方である。

ちなみに子供の頃から一番避けたいと思っていた死に方は、肥だめにはまって溺れ死ぬことだったが、幸い、もう肥だめなどは近所には存在しない。たぶん、大丈夫だろう。

さて、私の尻である。

もちろん私の家のトイレは、温水洗浄便座を完備している。私の尻の穴は、もう長い間、蝶よ花よと大切に育てられてきた。もはやトイレットペーパーなどという未開なもので扱われる存在ではない。貴族の尻と言っても過言ではないのだ。

その高貴なる尻が、なぜ、こんなに冷たい思いをしなければならないのか。暖房便座は、なにをやっているのか。故障かと思って確認すると、便座の電気が消えている。OFFになっていたのだ。

私は、疑問に思い、ふと昨日の夜のことを思い出す。

ああ、そうだ。あまりに過保護な尻にちょっと反省したのだった。便座は温かいわ温水は温かいわ、実に快適。仕事用の椅子に座っているよりも快適なくらいだ。

いくら何でもこれは甘やかしすぎではないか。などと考え、便座の温めをOFFにしたのだった。正直、電気代を節約したいという気持ちもあったことは否定できない。

まさか、普段の便座がこんなに冷たいとは思わなかった。ひんやりする程度だと思っていたのだが、氷を押しつけられたような冷たさだ。常人に耐えられるようなものではない。下手をすると心臓麻痺で死ぬのである。

私は、すぐに便座のスイッチをONにした。もちろんすぐには温まらない。温まるまでの間、私は、中腰で待機した。幸い便意はさほど切迫してはいない。しばらくすると太もものあたりが痛くなってきたのだが、そこからさらに数分を耐え、ようやく便座は温まった。

ゆっくりと腰を下ろすと、便座はほのかに温かかった。

尻の穴を温水で洗うという発想が大発明であることは間違いないが、便座を温めるという発想もたいしたものだ。私は、その発想を商品化したどこかの誰かに感謝した。その発想がなければ、いまだに私の尻は、冬になるたびに冷たい便座に心臓が止まりそうになっているに違いないのだ。

温水洗浄便座と暖房便座こそが、今世紀最大の発明と言っても過言ではない。インターネットや遺伝子工学量子論よりも、遙かに上を行く発明なのだと私は確信した。

だが、温水便座に関わるとんでもない事態が自分の身に降りかかることなど、その時の私は知るよしもなかったのである。