だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

「基礎にドラえもんの落書き」で訴えられたフジ住宅。5年も粘った末に和解で賠償金30万円。ああ、施主の男性が気の毒だ。

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あなたね。

「家を建てるのは男子一生の仕事」などと言う人がいるが、そんなものを一生の仕事にしてどうするっ、と叱りたい。なぜ「人に喜ばれたい」「人のために働きたい」と言えないのですかーっ、インスタントラーメンを発明した安藤百福さんを見習えーっ、と言いたいのである。

まあ、確かに家は高いからね。一生の仕事と言いたい気持ちはわからないではない。だが、それを言うのなら「男子一生のお買い物」だろう。

で、そのお買い物をしようとフジ住宅に発注した兵庫県の男性がいる。「基礎がそろそろできているかな」とワクワクしながら見に行ったら、なんと、その基礎部分のコンクリートドラえもんの顔が描かれていた。

間違いなく、ガーンですよ。高い金を払って、基礎にドラえもんですからね。せめてこれが名探偵コナンだったらショックは少ないだろうが、ドラえもんじゃあなあ。

さすがに施主の男性はキレた。何をしとんギャオーと吠えたはずである。私なら三回は吠える。

フジ住宅は当然謝って落書きを取り除いて自宅は完成したのだが、それでも男性の怒りはおさまらない。おそらくよほどそのドラえもんの顔が「イラッ」とくるようなものだったのか、もしくはフジ住宅の対応がよほどまずかったのだろう。

「神聖な基礎部分への落書きで侮辱され、精神的苦痛を受けた」として慰謝料150万円の損害賠償を求めたのである。

それに対して、フジ住宅は「落書き部分は完成後に見えなくなる。一般的にドラえもんに侮辱的な意図があるとは認識しがたい。作業員に悪気はなく、精神的苦痛は小さい」と反論した。

皆さん、いいですか。こういう屁理屈をこねるようになったら、男も企業もおしまいですよ。注意するように。

侮辱的な意図がないなら、悪気がないなら落書きしてもいいのか。だったらお前の尻にドラえもんの顔を描いてやる。さあ、尻を出せっ。

何とこの裁判は5年も続き、30万円の支払いでようやく和解となった。フジ住宅のたちの悪さが透けて見える訴訟である。5年もかけて30万は、金額的には馬鹿らしい。だが、その男性にとっては、大切なことだったのだろう。

また、精神的慰謝料という漠然としたものに30万円というのは、考えようによっては勝訴とも言える。もしかすると裁判官が「こら、フジ住宅。ええ加減にせんかい」と怒って和解勧告したのかも知れない。

それにしても、フジ住宅の危機管理能力のなさはひどい。さらに、仕事に対する誠意のひとかけらも見ることができない。施主に訴えられ、さらに5年間も裁判を引き延ばす。それでも東証一部上場企業かと言いたい。

原因が自分たちにあるのなら、ひたすら謝る一手である。そして、相手の納得する金額を建築費から値引きすべきである。なあに、その金額は、ドラえもんの落書きをした下請け会社に支払わせればいいのだ。

気の毒なのは施主の男性である。

せっかくの新築だというのに、そんな経緯がある家に気持ちよく住めるわけがない。もしかすると売却して、別の家に住み替えたのではないか。私ならそうする。

ちなみにフジ住宅の社訓をご存知か?

【一、我々はフジ住宅の社員である】

当たり前じゃーっ。なんで、当たり前のことをトップに持ってくるんじゃーっ。せめて「我々はフジ住宅の社員としての誇りを持ちます」くらいにしとかんかいっ。そもそもこのレトリックが通用するのは、例えば「トヨタ」とか「東大」とか「海兵隊」とか、自他共に認める特別な組織に限られる。「我々はフジ住宅の社員である」などと大上段に振りかぶっても、「はあ!?」としか返せないのだ。やめときなさい。

で、残りの四つは、なぜか語尾が「しよう」になっている。その一つは、こんな社訓だ。

【一、我々は熱意と誠意をもって仕事に接しよう】

いや、語尾が「しよう」はちょっと変でしょうが。おさまりが悪いでしょうが。読んでいて気持ちが悪いでしょうが。この文章なら「仕事に接します」が妥当である。なんなのだ、このセンスのなさは。

これが東証一部上場企業の社訓か、と私は泣いた。