だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

タイトルを見ただけで思わずレジに突っ走った本、ベスト3(番外編もあるよ)

あなたね。

人間は顔が大事なのだが、結構、名前も大事だ。例えば、福山雅治だって顔がいいからと油断してはいけない。もし、名前が金玉雅治だったら、おそらく結婚はできないはずである。

「あら、素敵。でも、名前が金玉だなんて」と女性は必ずためらうのである。「この度、結婚して、金玉珠代になりました」などという挨拶状を出せば、もう、クラスメートだった幸子や美佐恵は大笑いなのだ。

さて、あまり関係がない前振りだったが、とりあえずタイトルの素晴らしい本である。本にとって、やはりタイトルは大事だ。特に前知識のない本に関しては、タイトルは非常に大きい役割を果たす。

作者も内容も知らないのに、「おーっ、この本は面白そうじゃないか」と思わず手に取り、その勢いのままレジまで突進するという経験は、誰にでもあるだろう。もし一度もないとしたら、それは、君の感受性が鈍いということだ。自分の感受性くらい自分で磨け、馬鹿者よ。

では、番外編から。

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穂村弘さんの「にょっ記」である。なぜ番外編かというと、タイトルに感心はしたものの買わなかったからだ。実に、惜しい。私はダジャレが嫌いなのだが、このタイトルは気に入った。なぜ買わなかったかと言うと、改行が多く、スペースの空きが目立ったからである。私は貧乏性だから、文字がいっぱいの方がありがたがる傾向にあるのだ。

例えば、こんな文章が書いてある。

4月3日 武蔵丸 武蔵丸の夢をみる。夢のなかで武蔵丸は悲しそうな顔で訴えていた。「私より、大きいひとも、いるんです」「ええ」と私は頷いたが、それだけでは足りない気がして「わかります」と付け加えた。武蔵丸は悲しそうに頷いた。

面白くないことはないのだが、買うほどでもないかという感じだ。ちなみに「にょにょっ記」「にょにょにょっ記」も出ている。結構売れているのか、それとも調子に乗っているのか。とにかく、このタイトルは秀逸である。

では、ベスト3の発表である。

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3位は、柞刈湯葉(いすかりゆば)さんの「横浜駅SF」だ。まったく前知識がなかったのだが、ブックファーストで見つけた瞬間、ダッと手にとって、ダダダッとレジまで疾走し、迷うことなく購入した。この「横浜駅」と「SF」をただくっつけただけのタイトルは、シンプルがゆえに力強い。また、横浜駅というのがいい。これが「天下茶屋駅SF」では、未来感も期待感も生まれないのだ。

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2位は、片岡義男さんの「木曜日を左に曲がる」である。いや、なんという洒落たタイトルか。作品自体も当然、タイトルと同じくらい洒落ているのだ。短編集なのだが、主人公はいずれも女性で、カメラマンや小説家で、しかも美人である。彼女たちに関わる男も洒落ていて、思わず「いやいやいいや、そんなセリフを喋るおっさんはおらへんやろう」と言ってしまうほどなのだが、もちろんこれはそういう意図で書かれたものであり、恥ずかしくはならないから心配はご無用。ちょっと驚いたのは、出版社が「左右社」なのである。タイトルが「左に曲がる」で出版社が「左右社」。出来すぎやろ、と思う。

で、いよいよ1位である。

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最近調子に乗っているケン・リュウさんの編集による現代中国SFアンソロジー「折りたたみ北京」だ。このタイトル作は、ハオ・ジンファンという人の短編小説で、実は、まだ読んでいないのだが、北京を折りたたむ、という、そのイメージだけで、私はレジまで爆走した。何人か突き飛ばしたような気がするほどだ。中国は、韓国と違って小説においては優れた作品群が存在し、今もその血脈は続いている。発展途上国だからとあなどっていては、あっという間に追い抜かれてしまうのである。アマゾンで調べてみるとかなり評価も高いようで、週末に読むのが楽しみである。