だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

百花繚乱のボールペン市場。自分にふさわしいのは、どのボールペンなのか?

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私は、ボールペンをよく買う。

馬鹿な人間ほど知的関連のグッズに目がないのだ。「聞き流すだけで」などという詐欺的な語学の教材にもすぐに手を出すのである。まあ、あれは高価だが、ボールペンは最近安くていいのがたくさん出ている。

「お、ジェットストリームの色違いが出たか」「おう、このインクの色は渋いではないか」などと文具店に入る度に買うから、家中ボールペンだらけだ。金はないがボールペンなら売るほどある。

当然、全部は使えないわけで、両手両足を使っても、一度に使えるのは4本だ。おそらく死ぬまでボールペンには不自由しないのである。

私の定番は「ジェットストリーム」と「アクロボール」なのだが、最近よく使っているのが、「シグノ」である。ノック式ではなく、キャップ式のやつだ。先端部が金属で、鋭い円錐形を成し、ハードな雰囲気を醸し出す。いざとなれば、武器としても使用できそうだ。ジェイソン・ボーンならこのシグノ1本で5人は殺せるはずである。

インクの色が気に入っている。ブラウンブラックというネーミングで茶色の濃い色である。ぱっと見は黒なのだがよく見ると茶色なのだ。私のようなジジイにぴったりの色である。

書き味は、0.38ミリと細いせいもあるだろうが、結構硬い。「ジェットストリーム」のような滑るような書き味ではない。引っかかりを感じる。筆記時の音も若干大きいようだ。「ああ、私は、今、まさに紙の上に書いている」という実感がほしい人に向いている。

一番最近買ったのは、ゼブラの「ブレン」という製品だ。まず、そのデザインに惹かれた。洗練されている。ちょっとカッコ付けすぎではないか、と言いたいくらいスマートである。私のような不細工なジジイが持つボールペンではない。透明感のある都会的な美男美女が持つべきボールペンである。

例えば、温水洋一さんが使っているのを私が見たら、「あなたには、相応しくない」と取り上げ、代わりに銀行のネーム入りのボールペンを渡すだろう。ブレンは、人を選ぶボールペンなのである。

ただ、その割には、ネーミングが変だなと私は首をひねった。

ブレン、である。このフォルムには合わない気がするのだ。

ブレインからの造語だろうか。そう言えば、ブレンディという珈琲もあった。ブレンダというのは女性の名前か。いや待てよ。大阪にブレンダという風俗店があったな。結構大手だった。

そうか、わかった!

このボールペンの発案者は、ブレンダの常連客なのだ。無類のデリヘル大好き男に違いない。いやー、そんな男が作ったボールペンとは、何となく親近感が湧きますなあ、などとニヤニヤしていると、朝日捏造新聞にブレンの考案者の記事が載っていた。

佐藤オオキというデザイナーである。佐藤でありながら、大木でもある。どちらも名字なのだ。おそらく父親が佐藤で、母親が大木なのだろう。夫婦別姓から生まれた男女同権を地で行く極めてリベラルな名前なのだ(たぶん間違い)。

で、記事を読んで、なぜブレンなのかが判明した。風俗店のブレンダではなかったのだ。

先端がぶれないから「ブレン」なのである。ぶれるのを防止するために、スプリングを2つ付けたり、細い軸を太くしてしならないようにしているんだそうだ。

そこで疑問に感じたのは、ボールペンの先端がブレるという現象である。イメージからすると、ボールペンの芯の先端と筐体との間に隙間があり、ガタガタするということなのだろうか?

いやいやいや、今時、そんなチープなボールペンはないだろう。試しに、ジェットストリームやサラサやシグノ、アクロボールを使ってみたのだが、全部しっかりしているのだ。

ちなみに、ペン先をつまんでグラグラさせてみると、ブレンも微妙にガタガタしている。一番、ガタガタしたのがフリクションで、まったくガタガタしなかったのが上記のキャップ式のシグノである。ガタガタとゼブラが言う「筆記振動」は関連性がないのかも知れないが。

まあ、私は、元々鈍感な人間である。ペン先の微妙なブレなど、気がつくわけがない。ひとつだけ「ほお」と感心したのは、普通のボールペンは、ノックして逆さにすると、てっぺんの押す部分がストンと元に戻る。だが、ブレンはカチッと収まったままなのだ。まあ、あまり意味はないのだが、こういう積み重ねがクオリティとして結実する。

さて、この「ブレン」、検索上位の記事を読む限り、非常に評価が高い。

「書いていてとにかくブレない!」「書きやすさが圧倒的に向上!」「低粘度インクと高剛性ボディで書き心地を究めた」など、ほぼ絶賛である。つまり、これを書いている人たちは、「以前のボールペンはブレる」と認識しているということだ。

ホンマかいな、と思うのだが、まあ、人を疑いの目で見るのはやめておこう。ゼブラの動画にあるユーザーの声も、言わば感想であり、「ママチャリからロードバイクに乗り換えたような」という表現は秀逸であるが、私は「それはちょっと大げさやろ」と突っ込みたいのである。

私は、ブレンはいいボールペンだと思うし、とりあえず5本買ったのだが、おそらく愛用はしないだろう。

最初の方に書いたが、私にはちょっとオシャレすぎるのだ。「へぇ、ボールペンだけはオシャレだね」と言われるに決まっているのだ。そして、私の手の中のブレンは取り上げられ、「アンタには、この銀行名の入ったボールペンがお似合いだよ」と言われるのだ。