だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

その死体はおならをして勃起する。映画「スイスアーミーマン」

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おならは、好きかね?

私は嫌いだ。あれは、人間の尊厳を損なう現象である。どんなにイケメンであっても、おならをした瞬間に「えっ!?」と回りの人間は耳を疑うのである。

彼のおならの音が「プッ」くらいなら、まだいい。「プ~」でも大丈夫だ。だが、もし、「プピーププププピー、ブパーッ」とかいう音だったら、耳を疑うどころではない。人間性も疑われるのである。

従って、おならは人前ではやらない方がいい。私の回りでもクチャラーはいるが、意図的におならをする人間はいない。おそらくおならというやつは、人間社会においてタブーなのだ。

さて、死体がおならをして、さらには、そのおならの推進力を使って、ジェットスキーのように海上を突っ走るという映画を見た。「スイスアーミーマン」という映画である。

私がプロデューサーだったら、そんなアイデアを聞いた瞬間に「馬鹿か、お前は」とあざ笑うだろう。いや、「もしもーし」と頭をノックするかも知れない。「脳みそは入ってますか~」

ところが実際に死体が強烈なおならをして、それに乗った主人公が海の上を疾走するシーンを見てみると、意外と面白いのである。いやあ、びっくりした。

主人公は、無人島に一人流れ着いた男である。絶望して、自殺しようとしている状況だ。そこに死体が流れ着き、ジェットスキーのシーンにつながる。彼と死体は無人島を離れ、別の島らしき場所にたどり着く。

スイスアーミーマンというタイトルは、その死体が時にはジェットスキーになったり、口から飲み水を吐いたり、おならを発火させて火をおこしたり、口に突っ込んだ石をすごい勢いで吐き出して鳥を打ち落としたりという、便利なスイスアーミーナイフに例えたものである。

そのうち死体がしゃべったり、女性の写真を見て勃起させたりする。まあ、死体がそういう状態になると言うのはあり得ないわけで、私なども「ああ、なるほどね。これは、幻想なんだろうな。最後、人の世界にたどり着いたとき、振り返るとそこには腐ったただの死体が横たわっているだけなんだろう。そして主人公は、寂しげに彼の名を呼ぶんだ」などと想像していた。

いやいやいや。

ネタバレすると、幻想ではなく、主人公の父親や彼が片思いする女性、警察官たちの衆人環視の中、死体はおならを連発して海上を勢いよく去っていくのだ。なかなか思い切りのいい映画であります。

ちなみに死体が勃起したシーンでは、ズボンの前がテント状態になり、それが生き物のようにぐりぐり動くのだが、その動き方が妙にリアル。つい、私も若い頃を思い出し、かつては私だってあのくらいの勢いはあったものだ、いや、もっと大きくてもっと勢いがあったぞなどと呟きながら自分の下半身を撫で撫でしたのである。