週末の深夜、アールグレイの香りと味を楽しみながら、古い映画を見るのが長年に渡る私の習慣である。
ちょっと見栄をはってしまった。実際には、カップラーメンを食べながら、というのが正しいのだが、それではオシャレじゃないので、アールグレイということにしておこうと思う。
何度も見ている古い映画というのがポイントである。内容を知っているし、うつらうつらしても問題はない。また、いい映画というものは、何度見てもいいもので、その都度、感心して見入ったりする。
見るのは小難しい映画よりも、脳天気な映画の方がいい。
例えば、マカロニウエスタンである。おすすめをひとつ挙げると「ウエスタン」という映画で、これは非常に男臭い、かつ緻密で出来のいい映画だ。
主演は、チャールズ・ブロンソンという、ちょっとブルドッグに似た顔の俳優だ。いや、ブルドッグよりも、ブルテリアだろうか。もしかしたら、パグかもしれない。まあ、そういう雰囲気の顔だ。
時代は、西部開拓時代。荒野を列車が走りはじめ、そろそろガンマンの存在が無用になろうとしている時代である。そして、自分たちはもう時代遅れの存在なのだと知りつつ、そういう生き方しかできない男たちの物語である。
冒頭、ひなびた駅で三人の男が時間をつぶしている。何するわけでもないのだが、非常に緊迫感のある時間が流れる。そこにブルドッグみたいな顔をしたチャールズ・ブロンソンが現れる。三人は、彼を待っていた殺し屋なのだ。
ちなみに彼が現れる時、必ずハーモニカの音色が響く。実際に彼は、首からハーモニカを下げ、時折吹いたりする。このハーモニカ、ただの小道具ではなく、きちんと伏線になっている。最後の最後まで、実に見事に使われている。
次のシーンでは、一つの幸せな家族が虐殺される。ショッキングなことに、小さな男の子まで殺される。
そして、その家族の新しい妻であり母になる予定だった美しい女性が、駅に降り立つ。その女性を演じるのがクラウディア・カルディナーレという俳優で、私個人からすると派手すぎてノーサンキューという顔立ちである。すっぴんで宝塚歌劇みたいな顔だ。ちょっと暑苦しい。
その暑苦しい顔の女性と、ブルドッグみたいな顔をしたガンマン、さらに一家殺しの犯人にされた汗とほこりとヒゲまみれの汚い顔をした盗賊が絡み、これ以上ないくらい美しい映像が流れていく。
さらに、あなた。音楽がまた美しい。
監督は、セルジオ・レオーネ。音楽は、エンニオ・モリコーネ。なんとなく名前が似ているので、なかなか覚えられないのである。いつも間違える。
だが、この映画は傑作である。それだけは間違いない。
映画「ウエスタン」の美しい方のテーマ曲。他に決闘シーンで使われるかっこいいテーマ曲もある。