致命的に顔が覚えられない。
例えば、「おーい、山田君」と声をかけたら岡野君だったりする。大変気まずいのである。最近は、失礼にならないように「おーい、山田くんみたいな人」と声をかけるようにしている。記憶力が悪いと何かと厄介なのだ。
昨夜ヒマだったので「イット・フォローズ」という映画を見た。
冒頭、何かから逃げる女性が映る。逃げ切れなかったのだろう。次のシーンで、彼女は、無残な死体となっていた。砂浜で仰向けに倒れる女性の膝が逆に曲がっているのだ。非常に怖い。
で、場面はかわって、一人の少女が庭に置かれたプールに浮かんでいるシーンが映る。
私は思った。
ああ、さっき死んだ女性だな。この可愛い女の子が、さっきみたいな死に様になるのか。過去に遡っての回想シーンが本編だな。なかなか凝ったシナリオだ。どういう展開で、あんな悲惨な目に合うのだろうか。うーん、おら、ワクワクしてきたぞぉ。
映画を見ていない人のために言っておくが、これは、完全な勘違いである。冒頭の死者と女の子は別人である。よく見れば顔も髪の色も違うし、年代も違う。(視聴者が見る)最初の犠牲者として出てきただけの女性なのである。
だが、顔が認識できない私としては、そんなの、些細な違いなのだ。だから、ちょっと抗議しておきたい。
せめてどちらかを短髪にしてくれ。できれば、どちらかをアメリカ人的な肥満体型にしてくれ。似たような住宅ではなく、一人は集合住宅にしてくれ。そうすれば、同一人物だと勘違いすることもなかったのだ。
私は、映画を見ている間中、ずーーーーーっと「いつ死ぬか、今死ぬか、この後死ぬか」と心待ちにしていたのだ。
ま、気を取り直して映画の感想を言うと、なかなか面白い映画だった。
女の子がある男とセックスすると、不気味な人影に追いかけられるようになる。男は、彼女に言った。
「やつらは歩くだけだから車を有効に使え。追いつかれたら死ぬことになる。解決する方法はある。誰かとセックスすれば、やつらは追いかけてこない。やつらのターゲットは、君とセックスをした相手に変わるんだ。なんとか逃げ切ってくれ。君が殺されれば、また、おれが追いかけられることになる」
アイデア的には、「リング」に近い。呪いのビデオを見た人がリングウイルスに感染し、貞子が再生されて襲われて死ぬ。「ビデオをダビングして他の人に見せれば呪いがとける」というのも、「セックスすればその相手に移る」と似ている。
ラストは、わたし的にはハッピーエンドである。
はっきりと結末を見せてはいないものの、私が最初に勘違いした女性のように、足の関節が逆向きになって死ぬよりは、はるかにハッピーな結末である。ボーイミーツガール的な、絵になるシーンで終わってめでたしめでたしだ。
さて、これからこの映画を見る人の中で、私と同じように勘違いする人が出ては気の毒なので、最初に死んだ女性の晴れ姿を紹介しておこう。くどいようだが、この人は主人公ではないので勘違いしないように。