私は、缶コーヒーは「BOSSレインボーマウンテン」と決めている。
決めていないと、自動販売機を前にして3分くらい迷うからだ。3分あれば、カップヌードルも作れるのである。一日3分、10日で30分、一ヶ月で90分。仮に100年生きるとしたら、1800時間も自動販売機の前で迷っていることになる。何をしているのかっ、と私は自分を叱りつけたい。
さて、あなた。コーヒーが「脱・缶」なのだそうですよ。BOSSのレインボーマウンテンしか見ていなかった私は、そんなことちっとも知らなかった。
サントリーのペットボトル入りコーヒー「クラフトボス ブラック」が大ヒットして、新たな市場として注目されているらしいのだ。
もちろん私は、「BOSSレインボーマウンテン」専用人間だから、「クラフトボス ブラック」など飲んだことはない。そもそも、ブラックコーヒーは飲まない。甘いからコーヒーであると確信している。
サントリーの役員さんは、こう言っている。
「今までの缶コーヒーの業界の常識が覆された」
常識が覆されたほどの商品であれば、当然、「え~っ、なんだって!? コーヒーが缶じゃなくて、ペットボトル入り!? そ、そんな馬鹿なっ」などと驚かなければならない。さあ、あなたも一緒に驚きたまえ。
うーん、わからん。さっぱりわからん。
どでかいペットボトル入りの焼酎やウイスキーを見た時はちょっと驚いたが、ペットボトル入りのコーヒーなんて、これまでにもあっただろう。あったはずである。知らないけど。
単に缶コーヒーだったBOSSが、ペットボトルになった、というだけの話ではないのか? それが業界の常識を覆したのか? いったい何を言っているのだ。それとも大ヒットしたことを言っているのか? まったく意味がわからないのである。
私の常識がずれているのか、それとも記事の情報が足りないのか。なんとなくだが、役員さんの発言がゴソッと削除されているような気もする。
まあ、いい。
わからなくても、生きていくのには支障はない。
とは言え、私もこれまでBOSSを飲み続けてきた男である。可及的速やかに「クラフトボス レインボーマウンテン」を発売していただきたい。私は、BOSSレインボーマウンテンしか飲まない男なのだ。
ペットボトルしか置いてない自販機の前で、「ないっ。レインボーマウンテンがないっ」などと呆然として、「私は、何を飲めばいいのだ~っ」などと絶叫するのは御免こうむりたいのである。