私は、極力YouTubeを見ないようにしている。
元々素人芸が嫌いである。だが、素人芸を否定すると、「では、私が書いているこの文章は何なのだ?」ということになる。素人芸である。さっきから側頭部に違和感があると思ったら、ブーメランが刺さっていたのだ。
もう一つの見ない理由は、一部のユーチューバーのレベルの低さである。見る価値のあるユーチューバーもいるのだろうが、残念ながら、その出会いは少ない。
一般的に話題になるのは、覚せい剤ドッキリで警察官をおちょくって逮捕されたとか、チェーンソーを持ってヤマト運輸を襲って逮捕されたとか、女の子がアクセスアップのために助平な動画をアップしたとか、ただの目立ちたがり屋の馬鹿ばかりである。
私にとって、素人芸でも一番見たくない連中だ(女の子のは除く)。見てしまう危険性がある以上、容易に再生ボタンを押す訳にはいかないのだ。
そして、何より、自分がYouTubeを見れば、その投稿者に金が入るのだというのが腹立たしい。「顔が気持ち悪い。声も気持ち悪い。発想が貧困。こんな素人芸で金を儲けやがって」と嫉妬の念にかられるのだ。正直言って、器の小さな男である。
だから、私はYouTubeを見ないのだ。
さて、最近では、小学生がなりたい職業に、ユーチューバーが入っているんだそうだ。実に嘆かわしい。2016年度の調査では男子で14位だったのだが、将来的にはもっと伸びるのではないか。
もちろん、わからないでもない。
ユーチューバーは、スマホさえあれば、自分でも簡単になれるのである。しかも、間口が広い。あらゆる分野を対象とすることができる。
ゲームが好きならゲームの実況。ああ、そう言えば私、ゲームが好きなのだが、ゲーム実況のYouTubeはよく見ているのだった。どうしてもクリアできなかった「ファミコンウォーズDS」のクリア方法を教えてくれてありがとう。
また、科学が好きなら科学の解説だってできるのである。そう言えば、私が「なぜ、月の裏側は見えないのか?」というのを知ったのもYouTubeだった。あれは、実に分かりやすかったなあ。
などと思い返してみると、私もずいぶんYouTubeを見ているのである。素人芸、万歳!
そもそも出来のいいユーチューバーは、最低限、ラジオのパーソナリティーレベルの魅力は備えていて、素人芸と言うには語弊がある。まあ、ユーチューバーの世界もピンキリということだ。
で、最近、気に入ったYouTubeがあって、「the JaYoe Nation」というコンテンツだ。東北大震災の爪痕が残る地域を自転車(リカンベント)で旅する動画で、映像が美しい。編集もうまい。ドローンを使った映像も素晴らしい。そして、ちょっとした人とのふれあいにホッとする。
柔らかいジャーナリズムというか、「私には伝える義務があるのだ!」というジャーナリスト特有の上から目線がないのが心地いい。英語がわからない私だが、最後まで見ることができた。
ああ、YouTubeには、こういう可能性もあるんだなと思えるのである。こういうユーチューバーは好きだ。まあ、ハゲのオッサンだけど。
Cycling Kesennuma to Onagawa, pushing thru, reflecting on the tsunami