「弘法は筆を選ばず」と言うが、 実際ダメな人ほど筆を選びたがる。
私もそのタイプで、筆記用具にはずいぶんとこだわってきた。モンブランの万年筆なら伊坂幸太郎級の文章が書けるのではないか。なに!? 漆塗りの60万円の万年筆ですと!? よし、それだ! 夏目漱石級の名文が書けるに違いない。
もちろん、書く文章は銀行でもらったボールペンでも60万円の万年筆でも変わらないのだ。私の場合は、バカボンのパパのような駄文ばかりである。それはわかっているのだが、わかっていてもやめられないのが愚者のサガである。
筆記具がパソコンに変わっても同様だ。
うーむ。どうも打鍵が乗らんな。キーボードは、やはり東プレにすべきだろうか? だが、私はThinkPadの赤いポッチが大好きなんだがなあ。いやいや、もしかするとスランプはエディターのせいではないか? 一太郎などという前時代の遺物を使っているから、つまらん文章しか書けないのだ。うん、そうだ。そうに違いない。
などとキーボードやアプリのせいにしてきたのだが、もちろんこれも言いがかりである。駄文しか書けないのは、自分の責任である。才能も努力も足りないのだ。
いい加減あきらめればいいのだが、いまだに執筆用のアプリには興味があって、時々検索して探し回っている。いつかは理想のアプリが見つかって、そのアプリを使ったとたんにみるみる名文が書けるという幻想にとらわれているのだ。
で、最近見つけたエディターで「Focus Writer」というのが出来がよかったので紹介したい。
まず、見た目である。フルスクリーンにできるのが特徴で、執筆に集中できるというのが売りだ。確かにゴチャゴチャした一太郎(フルスクリーン機能はあるが、残念ながら疑似フルスクリーン)や、センスの悪いWindowsのUIが見えないためスッキリとして快適だ。さらに、デスクトップに並んだアイコンや他のアプリも気にならないのである。
フルスクリーンにしたデスクトップ画像を載せてみよう。これは、デフォルトで入っているテーマだが、なかなか心地いい画像なのだ。
テキストの周辺の用紙部分は、透明度を0~100%まで調整できる。単色に近い画像なら、用紙を透明にして文字だけが浮かんでいるようにも見せられる。もちろんテキストの種類や色・大きさも調整可能だ。ちなみにテキスト背後の画像をぼかしたりもできる。
以下は、私が壁紙として使っている画像をテーマとして設定した例である。
このアプリのいいところは、上部にカーソルを持って行くと、すぐにメニューバーが現れることだ。ファイルの保存や設定が通常のアプリと同じ感覚でできる。画像やテキストの選択は、「設定→テーマ」から「カスタム→編集」を選ぶことで行える。
また、「カーソル位置を常に縦方向の中央にする」を選んでおけば、書き込んでいる行が常に画面中央にあるため執筆がはかどる。
面白い機能としては、「1日2000文字」などと目標を設定しておくことで、達成率が出ることだ。これは、カーソルを下に持って行くと見ることができる。タイプライターの音が出せるのも意外といい機能で、私は音楽を流していないときはONにして使っている。
で、私がこのアプリを使い出してから、執筆に集中できて効率が上がったかというと、そんなことは全然ない。本体の横に23インチのモニターを置いてあるので、そちらに映っているDVDやMVを見てしまう。効率の上がりようがないのだ。
じゃあ、外付けのモニターを消せよっ、と自分でも思う。昨日もそう思い、今日も思った。だが無理なのだ。消しても、10分も経たないうちにONにしてしまう。名文が書けるのは、800年くらい後になりそうである。
ダウンロードは、こちらから。ちなみに寄付金の額が選べるようになっているが「0」で大丈夫だ。「このドケチ野郎が!」などとなじられることはない。