いや、世の中というのはわからないもので、ついこの間まで「マクドナルド、終わりやね」などと言っていたのが、今は業績がドーンと上がっている。逆に落ち込んでいるのがモスバーガーである。
飛花落葉。無常迅速。世の中は三日見ぬ間の桜かな。盛んなものは必ず衰えるのである。そして、衰えたかと思うと、また復活するものも出てくる。その繰り返しなのだ。
実は私はマクドナルド派である。マック派でもマクド派でもない。言葉を略すのは、言葉に対するリスペクトが足りないとの信念の元、常にマクドナルドと称している。だから、OH MY GOD!をOMGと略すようなアメリカ人は、最も軽蔑する人種である。
いや、そういう意味のマクドナルド派ではなかった。好きなハンバーガーがマクドナルドという意味で書いたんだった。書いているそばから忘れていくのである。怖ろしいことだ。
さて、マクドナルド派の私にとって、マクドナルドが復活したことは実に喜ばしい。
安っぽいというか大雑把というか、やはりあの味はハンバーガーの基本であり、カップラーメンに例えるなら日清のカップヌードル。弁当で言うならほっかほっか亭ののり弁。目玉焼きには醤油に決まっているでしょうが~という基本中の基本なのである。
それに比べて、モスバーガーは邪道である。ハンバーガーという脳天気なイメージからは、遠く外れる食べ物なのだ。
そもそもモスバーガーは非常に食いにくい。ソースがシャツやズボンに垂れるわほっぺたにくっつくわで、味わうよりも、いかに服を汚さずに食べるかというのが目的となる。その結果、ひじを横に開いてモスバーガーをつかみ、口がテーブルの上に来るように前屈みになり、ぶっさいくな見た目で食べることになる。
美意識に反する食べ物なのだ。花輪君なら、決して食べないだろう。
いくら注意を払ってもほっぺたは汚れ、つい拭き忘れて、「ホラホラ、あの人、ほっぺたに何か付けてる」と帰りの電車内で女子高生に笑われることになる。そんな恥ずかしい思いをしてまで、私は、ハンバーガーを食べようとは思わないのである。
マクドナルドが落ち込んだ時、モスバーガーは「しめしめ」と思ったはずである。
いや、それ以前から「うまいのはモスバーガー」とか「モスバーガーは健康的」とかいう口コミが流れ、モスバーガーの人も「うちは、あんな安物のハンバーガーを食べる客層とはちがいますからね」といい気になっていたはずなのだ。
しかし、あなた。
生者必滅、おごる平家は久しからずの法則がここでも発揮されたのだ。
2017年度第3四半期(2017年4~12月期)決算を発表によると、モスバーガーの売上高は544億円(前年同期比0.8%増)と横ばいながら、本業の儲けを示す営業利益は33億円(同19.6%減)と減益である。
客数も4期連続で減少している。
ニュースでは、効果的な販促施策が講じられていないせいだと説明しているのだが、それは当たり前の話で、もっと根本的な問題を指摘しなければならない。
要は、調子こいてたということである。男と企業は、調子こいてる時が一番危ないのだ。客をなめてはいけない。「うちのハンバーガーはうまいし健康的。少しくらい値上げしても、客離れすることはない」などと思っていたら、簡単に察知されて嫌気につながるのだ。
食べにくさが改善されない限り、私はモスバーガーを食べに行くことはないと思うが、それでもこのまま落ちていくのを見るのはつらい。実は、近所に思い出の店もあるのだ。美しく食べられる新型モスバーガーができたら、必ず行くのである。
ちなみに子供の頃よく行ったドムドムバーガーの店舗がなくなったのだが、あれは、調子こいたと言うよりも、味も店舗も店員も「ドムドムバーガー」らしさが皆無だったせいだと思う。一度くらい調子こくくらいの時期があれば、今の状況にはなっていなかったはずだ。
一度も思い上がれなかったというのも、ちょっと悲しい話ではある。