ファーストガンダム世代である。
当時私は、「飲みに行きませんこと」と誘ってくる美形の学友の誘いを断り、「今夜こそ付き合ってください」とすがりついてくる後輩を振り切り、機動戦士ガンダムを見るために家路をいそいだのだ。まあ、嘘だが。
いやあ、あのアニメは良かったなあ。
言わばロボットものなのだが、「鉄人28号」とは大違いだ。ガンダムより少し前に見た「宇宙戦艦ヤマト」もそこそこ良かったが、ストーリー的にもキャラクター的にもガンダムははるかに進化していた。そして、何より私はガンダムのネーミングのセンスの虜となった。
ロボットではなく、モビルスーツである。ガンキャノン、ザクⅡ、百式、ズゴック。そして、主人公の名前がアムロ・レイである。父さんにもぶたれたことがない少年なのだ。さらには、敵役の名前がシャア・アズナブルとなると、これはこれまでのアニメとはまったく違う。
鬼太郎の時代は終わったな、と私は確信した。なにしろ敵役がねずみ男なのだ。ガンダムに勝てるはずがない。
それから随分と時間が経ち私はジジイになったのだが、いまだに私はガンダムと聞くと血が騒ぐ。最近血が騒いだのは、「機動戦士ガンダム00」をGyaOで無料配信していると知った時だ。どこのどなたか存じませんが、タダで見せていただけるとはありがたいことである。感謝しながらシーズン2までぶっ通しで見た。
「機動戦士ガンダム00」は、戦争をなくすためにガンダム(ソレスタルビーイングという組織)による武力行使を行うという、これまでとは違った設定である。戦争孤児などの被害者が多く登場する。特に主人公の刹那・F・セイエイなどは、ISのような組織に洗脳されて両親を殺してしまったという過去を持つ陰惨なキャラクターである。
その一方、紛争地域以外の多くの人々は戦争を対岸の火事として見ていて、その脳天気かつ無関心の代表として沙慈・クロスロードという少年がいる。
だが脳天気な彼でさえ、やがて悲惨な運命に巻き込まれ戦火の中に飛び込んでいく。自分のミスで多くの人が殺されてしまうと言う悪夢的な経験をするのだ。
そうしたいくつもの悲惨なエピソードの間に、愛も語られる。その一つにロックオンとアニューのストーリーがあり、悲劇的な結末を迎える。やはり愛は悲劇が一番。シーズン2まで見て、一番、感動的なシーンだった。
その時に流れるのが伊藤由奈「trust you」だ。
曲自体もいいのだが、入り方がすばらしい。「えーっ、アニューちゃん死んだんか!?」と泣きそうになったところに、曲のサビ部分である「I love you I trust you」がいきなりアカペラで入ってくると言う絶妙の演出だった。
歌詞がまた良い。この作品のテーマにぴったりの歌詞なのだ。最初の部分を書き出しておこう。
花は風にゆれ踊るように
雨は大地を潤すように
この世界は寄り添い合い生きているのに
なぜ人は傷つけあうの?
なぜ別れは訪れるの?
「SFは絵だねぇ」という名言があったが、アニメは歌だねぇとつくづく思う。