危機管理能力のない企業が多い。
私も最近、ある東証一部上場企業に迷惑をかけられ、その補償をしてもらったのだが、担当者の上司の言葉に呆れた。
「このことは、他の人には黙っておいてください」
私は、時代劇に出てくる越後屋のように笑みを浮かべ、「へへへ、わかってまんがな」と同意し、「いやあ、あんさんも大変でんなあ」と相手の立場に同情するかのような会話を続け、他の所でも同様のケースが起こっていることを聞き出した。もちろんポケットの中のICレコーダーに録音していて、そのうち暴露してやるのである。
文句を言ってきた相手には補償して、何も言わない相手なら放っておく。その辺の知名度のない企業ならともかく、東証一部上場企業がそんな対応をしてはいけない。バレたら大変なのである。特に昨今のようなSNSによる拡散がある時代だと、「うちは、アンフェアな企業でっせ」と公言しているようなものだ。
さて、NGTの山口真帆さんの問題である。
正直、私はAKBなら何曲か好きな曲があるのだが、NGTは全然知らない。興味がないから、この事件についてのテレビやネットのニュースも見ていなかった。だが、彼女が話している様子をたまたまテレビで見て、つい見入ってしまい、珍しく義憤に駆られたのだ。そして、Wikipediaで確認したのである。
●1月9日、昨年12月に男二人から山口真帆が暴行を受けたことが明らかになる。二人は逮捕されたが、不起訴となり釈放。芸能リポーターの石川敏男が「普通は所属タレントが傷つけられた責任を相手側に取らせるのが当然でしょう。しかし、不起訴処分になっているのは、事務所側(AKS)の意向があって取り下げられた可能性もあります」との見解を示す。
●1月10日、AKSがNGT48 Official Site上でコメントを発表。グループ内のメンバーが、山口の帰宅時間を犯人に教えていたことを認める。ちなみに山口は、あるメンバーが家に押しかけるようにそそのかしたことを明かし、「メンバーが住んでいた向かいの部屋から男が出てきた」とも主張しているが、この点に関して運営側はコメントを出していない。
●1月11日、AKSは、3公演を中止。「現時点で新たに調査結果を発表する予定はない。劇場支配人によるファンへの説明や会見なども考えていない」と回答。
いやあ、ひどい。
おそらくAKSとしては、山口さん側の意見を取り入れれば、あるメンバーによるファンとの交際問題にまで発展する可能性があるだけに、「このままうやむやにしといた方が得とちゃうの」と判断したのではないか。もしかすると、そのメンバーと山口さんとを比べての損得勘定があったのかもしれない。
だが、山口真帆さんは、卒業を発表した公演の場で暴露した。
「社長には『不起訴になったので事件じゃないということ』と言われ、会社を攻撃する加害者とまで言われていますが、ただメンバーを守りたい。真面目に活動したい、健全なアイドル活動ができる場所であってほしかった」と語ったのだ。
社長としては、あちゃー、である。ただの世間知らずの小娘、強い言葉で上から目線で言ってやれば何とでもなるとなめていたのかもしれない。
だが、セクハラやパワハラは、相手が弱い立場のままでいるうちは問題ないのだが、相手が開き直れば形勢は逆転するのだ。あっという間に、AKS社長の吉成夏子さんは大炎上である。山口さんのTweetなどを見れば、こうなる可能性もあるとわかっていたはずなのに、なぜ、懐柔する方向で動かなかったんだろうか。馬鹿だねえ。
日本テレビ系「スッキリ」のMCである加藤浩次さんも「怖い思いをしているのに、事件じゃないというのは、まずおかしい」「会社を攻撃する加害者というのは、お前が黙っていたら、それは知られないで、活動を続けられるのに、さらに新体制になろうとしているのに、『お前、黙っているだけでいいんだよ』というように、僕は受け取れる」と社長の発言を非難した。
いや、わかりませんよ。
社長が本当にそんなことを言ったのかどうか、私が直接聞いていたわけではないから。だが、言ったとしたら、本当にこの社長は馬鹿である。独善的、上から目線、勘違い女、ファシスト、立憲民主党、芸能界の辻元清美、天下御免のポンポコピーと言われても仕方がないのだ。
ちなみに、黒幕の一人だとか陰で山口さんを笑いものにしたとか言われているメンバーの荻野由佳さんだが、彼女を起用した女性向けファッションブランド「Heather(ヘザー)」は、あわてて公式サイトの「スペシャル連載ページ」を削除した。
告知当初から「この時期になぜ彼女を起用するのか」との批判が寄せられていたのだが、ようやく「先週公開したプロモーションについて、様々なご意見を頂戴いたしました。頂戴したご意見を踏まえ、本プロモーションに関するコンテンツを削除することといたしました」と発表したのである。
起訴になっていないから事件じゃないはずなのに、削除されてしまったのだ。しかも、ヘザーの株価が暴落して、わずか6日で時価総額24億円も吹き飛んだんだそうだ。
いやはや。
危機管理能力がない人や企業が多すぎる。石橋を叩いて渡るということわざがあるが、現代の企業は、石橋を叩いても渡らず、一度叩き壊してからコンクリートで頑強な橋を作り直し、一年くらいしてからようやく渡るくらいでないと生き残れない。
何を隠そう私が、そうである。まあ、渡る頃には、渡ってどこに行くかは忘れているのだが……。