以前、小池都知事の言葉を聞いて首をかしげたことがある。
「ここでまた『アウフヘーベン』という言葉を使っちゃうと、何か思い出されるかもしれませんけれども、国民のニーズというのは、メディアの方々がひかれたレールの延長線上にはないように思います」
いやいやいや、なーんにも思い出さないのだ。アウフヘーベンという言葉は、その時はじめて聞いた。それ以来、私の中ではブーメラン蓮舫、セメントいて辻元清美に並んで、アウフヘーベン小池都知事となったのである。
これを読んでいる方の中にも、アウフヘーベンという言葉を知っている人はいないはずだ。そんな頭のいい人が、私のブログなど読んでいるはずがないのである。
知らない人のために説明しておくと、「アウフヘーベン」とは、矛盾する2つの要素が混じり合うことで、さらに高度な意味を持つということらしい。例えば、熱いたこ焼きと冷たいハーゲンダッツが混じり合って、ハーゲンダッツたこ焼き味になるようなものだ。ちょっと違うかも知れないが、たぶん70%くらいは合っていると思う。
で、そのアウフヘーベン小池都知事が、コロナウイルスの感染者拡大を受けて、「何もしなければロックダウン」と言い出した。
いやいやいや、アウフヘーベン小池都知事。こういうきつい言葉を使うのは危険である。すぐにひとり歩きするのだ。「オリンピックの中止はあり得ない」という言葉によって、どれだけ日本が世界から悪評を得たかもう忘れたのか。
都知事の会見後、さっそく東京では「アカン、首都封鎖や」と広まってスーパーではあっと言う間にインスタント食品がなくなったのだ。
なぜひと言、「心配はいりまへんで。供給は止まりません。それに東京には食料の備蓄は十分にありまんがな。アメリカやヨーロッパの民度の低い国みたいに買い占める必要はありまへん。カップヌードルのトムヤムクンも山盛りでんがな。大丈夫でっせ」と言わなかったのか。
まあ、私が見たのは冒頭の10分ほどの発言だけで、その後の質疑応答は見ていない。質疑応答の中で、なにか安心させるような発言もあったのかもしれないが、まず冒頭にそうした発言があってしかるべきだと思う。
トイレットペーパーの買い占めを見てもわかるとおり、日本人の民度だってさほど高いものではないのだ。
同様に、オーバーシュートやロックダウンと聞いて意味が分からない人も大勢いるという現実を、しっかりと認識した上で言葉を発していただきたいのである。