だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

小指の関節が逆に曲がった。意外と痛くはなかった。

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いやあ、あなた。自転車は怖い。

坂道で気持ちよく走っていたら、いきなりハンドルが真横を向いて、体が前へ投げ出されたのである。自転車が倒れた場所から3メートルくらいの場所に放り出され、空中で前転しながら横2回転捻りを加え、スタッと着地をすれば良かったのだが、私は中国雑技団ではないのだ。顔から落ちたのである。

以前バイクで転倒したときは気を失ったのだが、今回は大丈夫だった。うむ、意識は正常、どうやら足も大丈夫なようだ。冷静に判断し、何事もなかったように立ち上がり、後ろから来る車のために自転車を路肩に寄せた。

転倒した原因はすぐにわかった。

路肩に背の高い雑草が生えていたのだが、よく見ると雑草ではなく枝だった。いや、雑草に紛れて硬い枝が一本隠れていたのだ。この枝にハンドルが引っかかったようだ。アメリカ人だったら国に対して訴訟を起こすところだが、私は日本人だから「路肩に寄りすぎたようだな」と反省し、枝を思い切り蹴飛ばして根本から折ってやったのである。

メガネが吹っ飛んでいたようで、まずその捜索をと考えたのだが、ふと気がつくと左手の指が痛い。そして、左手の小指が曲がらないのである。あれえ、などと思いながら左手を見ると、小指の第二関節が逆に曲がっていたのだ。よく映画やドラマで見る拷問手段である。

さすがに沈着冷静な私も驚いた。逆向いとるやんけ、と思わず関西弁が出たほどだ。曲げようとすると鋭い痛みが走るのだが、思っていたほどの痛みではない。

さて、どうするか?

2秒考えて、私は曲がった第二関節部分を右手の親指と人差指でつまみ、ぐいと力を入れたのである。グリグリッと音がしたような感覚がして、関節は元に戻った。やれやれ。

実際にこんな処置をしてよかったのかどうかはわからないが、やっぱり関節が逆に曲がったままだと気持ちが悪いじゃないですか。こんなんで帰宅したら、クレオパトラ似の奥さんが卒倒しますよ。

で、その後、どこかに飛んでいったメガネをやすし師匠のように手探りで探し(車にもひかれず片方のレンズが外れていただけで無事発見)、ただしフレームが歪んでいたので裸眼で恐る恐る帰った。

帰ってから確認したら左半身の打撲がひどくて、どうやら肋骨にヒビが入っているようだ。まあ、肋骨など放っておいてもくっつくから大丈夫だ。顔面も左頬骨を打撲していて腫れ上がっていた。まるで殴られたボクサーだ。まあ、これもマスクで隠れるから大丈夫だ。

一番心配だったのは、左唇の上側の打撲で、これは下手をしたら歯を折るところだった。どうやらヒビも入っていないようで、欠けた部分もないようだ。まあ、万一歯が折れても、マスクがあるから大丈夫なのだが。

車にひかれず、メガネも破損せず、歯も折れなかった。実に運が良かったと言えよう。

鏡を見ると顔の左側が腫れ上がり、だが右側は元の通りで、これはまさにバッドマンの悪役のツーフェイスである。右を向いて「ふふふ」などと笑ってみると、鏡の中私は、なかなか不気味なのだ。