だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

やっぱりウルトラマンのスペシウム光線は猫背でなくてはならない。古谷敏さんの朝日新聞連載が終了。

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恥ずかしながら朝日新聞購読者である。一身上の都合で、もう、40年近く朝日新聞を購読しているのだ。おそらく死ねば地獄行きだろう。

ただ、捏造偏向を社是とした新聞であっても、たまにはいい記事がのるのである。ああ、購読していてよかった、と思える記事がわずかではあるが存在するのである。

いやいや、「わずか」というのはよく書きすぎだな。「ごくまれ」と言ったほうが正確だろう。

いやいや、待て待て。千載一遇、枯れ木に花咲く、山の芋が鰻になる、さらには西から上ったおひさまが東に沈むのであり、それほど滅多にないことなのだ。わかっていただけただろうか。

さて、今回の記事は文化・文芸欄の「語る」というコーナーで、スーツアクター・俳優として古谷敏さんが登場したのだ。あのウルトラマンのスーツに入っていた人だ。

ウルトラセブンのファンである私にとっては、ウルトラ警備隊のアマギ隊員のほうが馴染みが深い。

全8回に渡る連載だった。腐臭漂う朝日新聞の紙面に、涼やかで清廉な風が吹くようなそんな心地よさを感じることができた。もし、朝日新聞を購読していなければ、この記事とは出会えなかった確率が高い。我慢して購読していてよかったと、朝日新聞購読という負の慣習の中、筒井康隆さんの連載小説以来のポジティブな気分になれたのだった。

もともとこの方、昭和の時代にあって185センチというかなりの高身長で小顔。それが美術デザイナーの目に止まり依頼を受けたのだという。そりゃあホリエモンでは、あのウルトラマンのカッコよさは出せないのだ。ホリエモンウルトラマンじゃなくて本当に良かった。

ちなみにウルトラQのラゴンやケムール人もこの人が入っていた。特にケムール人は私も大好きで、あの走り方はよく真似たものである。

古谷さんは、ウルトラセブンが終わって俳優をやめ、怪獣アトラクションショーの会社を立ち上げるのだが、バブル崩壊後解散し、かなりの負債を抱えたという。それをきっかけとして関係者との連絡を絶ち表舞台から姿を消した。

俳優なのに顔が出ないスーツアクター出身であり、怪獣映画などには出ていたものの端役がほとんど。俳優としては、活躍したとは決して言えない。ビル清掃業などのアルバイトもしていたようだし、かなり苦労されたのではないか。しかも、ある意味有名人であるわけで、現実とのギャップで、「過去を知られたくない」という意識も強かったのかもしれない。

で、そのまま終われば悲劇なのだが、そんなことはなかったわけです。

2007年にウルトラマンの美術デザイナーの展覧会が開かれ、そこでアンヌ隊員やフジ隊員と出会って「探してたのよ」などと泣きながら言われ、いやあ、よかったよかった。再び表舞台に出ることとなった。

2009年にウルトラマンになった男」小学館から出版されたのだが、そのサイン会でファンから言われた言葉が泣けるのである。

「もう、光の国には帰らないでくださいね」

上に載せた写真は、最終回のものだが、お年はめしたもののちょっと猫背になっているところなど、まさにウルトラマンである。スペシウム光線は、こうでなくてはならない。

私もクレオパトラ似の奥さんから、「最近猫背になってるわよ」などと注意されるのだが、その時はシュワッチと返事をしておこうと思う。