だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

脱100円ショップのすすめ。百均が似合うようになったら、男稼業もおしまいさ。

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まあ、大掃除じゃないんだけど、机の引き出しを全部チェックしてみたわけです。暇だし。

そうしたら一つの引き出しの中に、やたらと印鑑と印鑑ケースが入っていて、いったいいつこんなに買ったのか、まるで記憶がないのである。

朱肉のいらないシャチハタのもあって、「あれ? これ欲しかったんだけどな」などと訝りながら試しに押してみたら、汚い赤のインクがビチャーという感じで、こんなものとても押せやしない。そうだそうだ、あまりひどいんで使わないことにしたんだったと思い出した。で、よく見るとシャチハタではなくて、おそらく百均の商品だ。安かろう悪かろうのいい見本である。

で、印鑑ケースも色々あるのだが、一番しっくり来るのがやっぱりシャチハタ。それ以外の百均で買ったやつは、いずれも使いづらい。シャチハタのは朱肉がなくなったためにお払い箱にしてしまったのだが、考えてみれば替えの朱肉くらい売っているのではないかと文具店に行ったわけです。百均じゃなくて普通の文具店。

そしたらあなた。ひとつ目立つ印鑑ケースがあって、黒地に赤いミッキーマウスが描かれている。表側は黒で裏は赤。この配色もなかなかいい。確認するとシャチハタの製品で、前に使っていたのと同じ筐体でデザイン違いらしい。

私は、ジジイではありますが毎年ディズニーランドに行っていた時期もあり、またアメリカは嫌いではありますがミッキーマウスとベティーブープは好きである。思わずその印鑑ケースを手にしたわけです。

値段を確かめると600円。5分ほど悩み、赤と黒のエクスタシーなどと意味不明な言葉をつぶやいたりしながら、結局買ったのですが、ついでにそばにあったA6サイズのコクヨのスケジュール帳も手にとってレジへ向かいました。

正直、ミッキーマウスの商品だけでは恥ずかしかったのだ。あら、この爺さんブサイクでハゲてるくせにミッキーマウスの印鑑ケースだってウケる~などと思われるのではないかと恐れたのである。コンビニでコンドームを買うときと同じ心理だ。

そしたら驚きましたね。「1,100円になります」と言われたのである。

えーっ、この小さな薄っぺらのスケジュール帳が500円もするんかいっ!? せいぜい200円くらいだと思っていたのである。もちろん値段を確かめずに持っていった私が悪いのだが、100円のBOSSレインボーマウンテンを買うときにも散々悩む貧乏人からすれば、ノート一冊に500円など暴挙である。

まあ、買いましたけどね。これが吉本風のキャラクターなら「えー、これ500円もすんのかいな。ほならやめときまっさ。ごめりんこ」などと言うのだろうが、なにしろ私は気持ちだけは松田優作ですからね。私の出自はイギリスの没落した貴族という設定ですからね。買いましたよ。

家に帰ってから、つくづく反省しました。

いつから私は、百均を基準にして生きていたのか、と。情けないにもほどがある。百円で買えることがそんなに嬉しいのか、と自嘲したのです。その感情が貧乏臭さをさらに増すことになることに、私は気づいていなかったのだ。

例えば、松田優作が百均で買い物をして「ああ、ええもん買えた」と喜ぶだろうか。「えー、こんなもんが100円やて。お得やなあ」と喜ぶだろうか。いいや、喜ばないのである。死んだってあの人は百均には入らない人なのである。

私は、ここに誓うのであります。脱百均。さらば100円ショップ。貧しくとも正々堂々、500円のノートを迷いも後悔もなく買える男になる、と。「おっ、新しい自転車用のライトが出てるではないか」などと、もう決して飛びつかないのである。百均のライトは徹底的に暗いのだ。

というわけで皆さん。今度百均で私を見かけても、見て見ぬ振りをしていただきたい。おそらく「落花糖」を買ったのだと思う。あれは、どう決意したって買うのをやめられないのだ。