相変わらず私のパソコンは起動が遅い。前は、6分以上かかっていた。OSの初期化をした今も3分以上かかる。
まあ、いいのだ。そんなに忙しいわけではないからな。ネットで見た情報では、最近のパソコンは10秒とか20秒で起動するんだそうだ。そんなに速いと、ゆっくりコーヒーも飲めないではないか。私のようなジジイには、むしろ遅い方がいいのである。
だが、それでも「あなたのくたばりかけのパソコンが爆速に」などというキャッチを見ると、つい、クリックしてしまうのである。やはり引け目を感じているのだろう。特に仕事の電話がかかってきた時などは困るのである。
「今、PDFを送りました。見てもらえますか?」
「ん、ちょっと待ってくれ。まだパソコンが起動してない。……んー、あと3分くらいだな。待つ間、何だったら歌でも歌おうか? なにかリクエストはあるかね? おすすめは、水前寺清子の365歩のマーチだが。いしだあゆみのブルーライトヨコハマでもいいぞ」
「いや、結構です」
起動するまでの間が持たず、これで私は何件かの得意先を失っているのではないかと疑っている。「あの人は頭の回転も遅いがパソコンの起動も遅い」などと陰口をたたかれているような気がするのである。
で、くたばりかけのパソコンを爆速にする広告である。Xtra-PC Turbo 16という商品で、今、Amazonでは4,800円で売られている。★は三つだ。
調べてみると、あなた、これは単なるLinuxOSが使えるようになるUSBメモリなのだ。どのディストリビューションが入っているのか知らないが、USBメモリでLinuxを起動して使うという製品なのである。当然、Windowsで使っていたソフトは使えない。
まあ、Windows10よりかは速くなるのは確かだろう。私も古いパソコンをLinux機にして使っているので、LinuxOSの快適さは知っている。だが、いかんせん日本語変換がイマイチなのだ。プログラムに使うなら十分だろうが、日本語を書きつづける私にはメインのパソコンにはなり得なかった。
レビューを見ると、怒っている人が多い。★一つの人が35%もいる。
USBメモリから起動する方法もわからない人がいるのだろう。「使い方が分からない。設定も分からない。英語で分からない」などと書いてあって、この短い文章の中に怒りと哀しみが凝縮されているようで、私は思わず笑ってしまったのだ。
カスタマーQ&Aにも面白いのがあった。
質問:使用中のPCにインストールしてある、イラレやフォトショも問題なく使用出来るのでしょうか?
回答:いまいち
いやいやいや、Windowsのイラレやフォトショはまったく使えない。使うためには、再起動してWindowsOSに切り換える必要がある。ただし、LinuxにはLibreOfficeが入っているのでイラレ的な使い方はできる。あとGIMPのLinux版をインストールすればフォトショ的な使い方もできるのだ。日本語変換がイマイチなのを除けば、とりあえず仕事には使えるでしょうな。
しかし、問題はLinuxは基本的に無料であるということだ。自分でやればタダである。私のようなジジイでも簡単に導入できたのだ。誰でもできるのである。また、こんな製品に金を出すのなら、ハードディスクをSSDに換装した方がいい。古いハードディスクを使っているのなら、かなりスピードアップするのではないか。
業者的にはLinuxを起動させるUSBメモリを作る手間がいるとは言え、それをかなりの高値で売っているわけで、これは詐欺に近い商法だと思える。しかも、メモリはたったの16㎇である。500円くらいで買えるのではないか。せめて、32㎇にしてやれよ、と思うのだ。
と言うわけで皆さん。
爆乳に騙されるのは仕方がないが、爆速に騙されてはいけません。起動が遅ければその合間にコーヒーを飲めばいいし、Amazonのビデオを見ていて輪っかがくるくる回ってもCMだと思って待てばいい。エロ動画を見ている途中でパソコンが固まったら、うーん、それはつらいな。
わしのいきり立った性欲をどうしてくれるんじゃーと腹が立つのも当然と言えるだろう。実は、私のパソコンも最近そういう状況によく陥る。そろそろ新しいパソコンを買った方がいいのかもしれない。