だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

映画版「屍人荘の殺人」を見て、買ったまんまの小説も読む気になる。

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いやあ、驚いた。

映画版「屍人荘の殺人」である。

小説は買っていた。なにしろ「史上初、デビュー作にして三冠!」である。このミスやら週刊文春ミステリーベスト10、本格ミステリーベスト10などの国内部門で第一位なのだ。金もないのに思わず買ってしまったのである。

ただし、読んでなかった。

私は、頭が悪いという非常に大きな欠陥があるのだが、当然のごとく推理小説は苦手だ。特に本格ミステリーはまったくの苦手。正直、「名探偵コナン」ですら、「えっ、どういうこと?」と理解できないことが多い。ジッチャンの名にかけて、私には推理小説は無理なのだ。いや、ジッチャンは、コナンじゃなかったか。

まあ、いい。まして、本格ミステリーベスト10で一位を取るような小説が理解できるわけがない。どうせ、登場人物の名前すら覚えられないに決まっているのである。

で、ありがたいことに、Amazonで映画版「屍人荘の殺人」が見放題になっていた。もちろん私には、相貌失認という困った持病がある。人の顔を覚えられないのである。当然、映画を見ていても「あれ、この人って誰だっけ」ということが多く、途中で何がなんやらわからなくなることも多い。

だが、心配は御無用。安心したまえ。

私は、前髪ぱっつんの女性だけは認識できるのである。「DESIRE」を歌う中森明菜。「キル・ビル」に出ていた栗山千明。「あやしい彼女」の多部未華子。もちろん、「サザエさん」のわかめちゃんも認識できる。まあ、全員一緒に出てきたら、たぶん認識できないが。

「屍人荘の殺人」の主役である浜辺美波も前髪ぱっつんであり、他に似た髪型の女優がいなければ主人公として認識し続けることができるはずだ。あとは、トリックに集中すれば、たとえ三冠を成し遂げた本格ミステリーであっても理解できる可能性は高い。

で、メモ帳を手にしながら意気込んで見てみたんだが、いきなりゾンビが出てきた。いやいやいや、本格推理でゾンビは出ないでしょう。しかも、ホームズと呼ばれる人物が、全然ホームズじゃない。「名探偵コナン」で言えば、毛利小五郎なのである。しかも、古い映画の小ネタも入ってくる。

私は手にしたメモをテーブルに置き、本格ミステリーに対する気構えを解き、全身に込めていた力を抜き、ほうけたような表情で「屍人荘の殺人」を見続けたのである。

見終わってから私は、書棚に手を伸ばし「屍人荘の殺人」を取った。パラパラと読んでみると、やっぱりゾンビも出てきている。勝手に映画版に追加したアイデアではなかったのだ。まあ、いくらなんでもそこまで改変する監督はいないだろう。

私は、「屍人荘の殺人」を本格推理の分類から外すことにし、一般ミステリー小説のコーナーに移した。「本格ミステリーなどとビビらせやがって」とつぶやく。「大江戸恐龍伝第3巻」を読み終えたら、「屍人荘の殺人」を読むつもりだ。