だれかが松葉杖で扉をたたく

結構、嘘つきである。

咳をしても一人。なぜ、キミは寂しいのか?

私は、個人事業主である。たまにバイトを雇うこともあるのだが、基本的には一人で仕事をやっている。バイトがいると、オナニーどころか鼻くそをほじるのも苦労するのである。私の性欲と快適な鼻呼吸を阻害しやがってと、いつも腹立たしかった。

ある日、同じ個人事業主という立場の知り合いがやってきてこう言った。

「ひとりで事務所におって寂しくはないんか?」

アホかと思った。いい年こいて「寂しくはないんか?」だと。恥ずかしい男だ。心は乙女なのか。聞いてみると、そのオッサンは一人で事務所にいるとひどく寂しいのだそうだ。忙しいときは問題ないが、暇になるとダメなのだという。情けないやつだ。お前は、ウサギかと思った。

そう言えば、74歳の爺さんが独身のまま生きて、親が死んで一人になり「やっぱり寂しいんだよね」などと語っていた番組があったらしい。それをネタにしたまとめサイトを見たのだが、私などはさっぱり理解できなかった。

一人が一番自由で気楽ではないか。誰に気兼ねすることなく鼻くそをほじって食べることができるのである。いや、私は食べないが、食べるのが趣味の人の立場に立って言ってみた。鼻くそどころではないぞ。ウンコだって食い放題だ。そういう趣味の人は、独身を貫くべきである。

一人は、寂しい?

アホか。人間は基本的に一人で生きていける動物なのである。そういう社会構造にまで発展しているのである。よく安っぽいドラマで「人間は一人では生けていけないんだ」などというふ抜けたセリフがあるが、あれは間違いなのだ。

そもそも一人で生きていく覚悟のない人間には、他人を思いやったり愛することはできないのだ。友情とは、「友達などいらない」と考える者同士にしか生まれないのである。SNSでの関係など、あれは無に等しい。

もちろん私にはクレオパトラ似の妻と非常にできのいい一人息子がいるわけで、そんな私が声を大便にして語ったところで説得力はないだろうが、あなたね、結婚などしなくてもいいのである。するべき相手が見つかったときだけ、結婚を考えればいいのだ。婚活だマッチングアプリだと、無理に相手を探す必要などない。

妻子がどんなにすばらしい人間でも心配の種は尽きないし、むしろ飛躍的に不安の種は増えていく。さらには最後には死ぬという絶対に揺るがない結論がある。妻も死ぬし息子も死ぬ。血圧200を超える私などは、すぐに死ぬのである。ああ、私はなぜ生まれてきたのか。

まあ、生まれてきたのは自分の意思ではないので仕方がないが、結婚しないという選択肢は選べるのである。

そして私の結婚運が悪ければ、今頃私の妻は、毎日お菓子ばっかり食べてぶくぶくと太り、「グッチのバッグ、こうてえな」などとほざき、引きこもりの息子が「オヤジのカードでゲームの課金30万円つこてしもたで」などとヘラヘラ笑ったりしているのである。ああ、今の妻子でよかったと心からホッとするのだ。

いや、ちょっと自慢してしまった。申し訳ない。